2025年12月2日
Dr. Joe Burch (シカゴ大学)によるFinancialization and Healthの特別レクチャー
近年、金融ビジネスは国際的にはもっとも巨大な経済シェアを有するようになっています。米国ではGDPに占める割合は製造業が低下の一途であるのに対し、金融・証券ビジネスは20%を超え、最大の産業となっています。そうした影響はすでにヘルスセクターにも及んでいます。かつてのように営利企業による病院の買収ではなく、非営利病院の資金獲得・経営に金融商品が大きな影響を持つようになっています。なかでもプライベート・エクィティ(Private Equity(PE); 非公開株式への投資)の仕組みは、米国のヘルスセクターで次第に大きな影響を持つようになっています。
ただしPEは比較的短期に収益を上げることを求めることから医療の質への影響が懸念されています。Burch先生とそのチームはPEが及ぼす診療の質に与える影響を実証した研究をJAMAはじめとして発表してきました。一方、これは彼岸の火事ではありません。PEや不動産証券化による資金流動化(REIT)は、かつて安倍政権のもと、投資家による「医療介護ビジネス」参入の道を拓き「経済活性化」を図る政策として国土交通省や金融庁などの音頭取りで制度整備が急速に進められました。
これに対して診療の質・診療の独立性への負の影響を懸念する声があがっています。今回はこうした国内の動きにおいて厚生労働省などでの議論に参加してきた早稲田大学の松原由美先生、現在PEの影響を保健経済学的観点から研究している慶剛義塾大学の後藤励先生、そして本学経済学研究科の飯塚敏晃先生をコメンテーターとして招き、日米における金融ビジネスが病院・家計・医療サービス利用者に与える影響と今後の研究の方向について議論しました。

講演者:Dr. Joe Burch (シカゴ大学)
Special Lecture Dr. Bruch(20251202)







